1/17/12

音楽家の思考、そして文章力


© S. Mitsuta

先日アメリカ人の物理学者の友人(男性)が遊びにきていて音楽談義をしていたら、「同僚の研究者の中に音楽演奏が趣味なひとが多い」と話していた。ピアノ、ヴァイオリン、ロックバンドのギタリストという人もいるらしい。物理の世界は男性が多くを占めているらしいが、少数派の女性物理学者(彼の奥様も物理学者)に限って言えば、彼の周辺ではピアノを小さい頃から習っている人がダントツに多いそうだ。ピアノが比較的一般的な習い事である事実も大きいとは思うが、彼曰く、ピアノで培われた空間認識能力が物理の思考の世界でも積極的に役立つのだろうと語っていた。

そもそもなぜ我々が音楽の話をし始めたかというと、その時私たちがかけていたCDの演奏が気になって「これは誰?」と彼が聞いてきたのがきっかけだった。その時かけていたのは小川典子さんの「Claude Debussy Preludes Premier Livre&Deuxieme Livre」だった。

話は変わるが、音楽家の紡ぎだす文章に美しいものが多く感心することが多い。文章の好みはひとそれぞれだけれど、その音楽家が優れた洞察力をもった人間であるということを大前提として,私は彼らの書く文章の音楽的要素(全体の流れの構成、リズム、テンポの強弱など)が心地よくて虜になってしまう。

先述のロンドン在住のピアニスト小川典子さん(過去のブログ:http://motokouda.blogspot.com/2008/03/blog-post.html)もその美しい文章を紡ぎだすおひとり。彼女の著書「夢はピアノとともに」も大変楽しく拝読したのだが、今回リニューアルされた彼女のウェブサイトで彼女が過去に新聞等に連載した記事のアーカイブもあって、あらためて彼女のピアノだけでなく、文章のファンになった。彼女のウィットや時折ぴりっと効いたサーカズムは長年の英国生活で培われたものなのだろうか。アディクティブ。

彼女のウェブサイトはこちら:http://www.norikoogawa.com/