8/31/05





最近ベトナム人の友人の間ではよく「Nhat Ky Dang Thuy Tram」の話題がでる。
これはベトナム戦争中にベトコンの医師として従事していたDang Thuy Tramが残した日記である。ベトナムではこの20年の出版史上で記録的なベストセラーとなっている。1970年に亡くなる数ヶ月前までを記した彼女の日記は、一度はアメリカ軍の手で軍の資料として不要な遺品として他の者の遺品と共に燃やされそうになるが、当時アメリカ軍の通訳をしていたNguyen Trung Hieuがその内容に心を打たれ、上司であったFrederic Whitehurstに保管をすすめる。Hieuの訳によって内容を知ったWhitehurstも同様に、敵側であったこの一人の共産党員女性の生き方に感動し自分のポケットに入れて戦火をくぐりぬけその後アメリカに持ち帰る。日記を家族に返すべく、彼のTramの肉親探しがはじまるが難航ししばらく中断せざるをえなくなる。しかし諦めかけていた頃に彼と彼の弟Rober Whitehurst(彼もベトナム戦争に参加、後ベトナム人女性と結婚。)が参加したベトナム戦争関係の会議の席でこの日記を発表した事から違う学者(Ted Engelmann)の助けによって家族が発見され今年4月末家族のもとにスキャンしてCDにおさめられた日記がEngelmannによって手渡された。Tramの81歳になる母親は娘の死から35年後に日記を通して娘に再会する事になった。原本はテキサス州にあるテキサス・テク・ユニバーシティーのベトナムセンターにおさめられている。現在オダカ・タイ(日本語の漢字不明)氏によって日本語への翻訳が進められており、来年には出版される予定らしいので興味のある方は乞うご期待。
実は私まだこの本を読んでいないのだが、先日、一足先にベトナム人アーティストNguyen Nhu Huyがこの本からのインスピレーションを元に作った作品をみる機会があった。シースルーのオーガンジーの布にこの日記に登場する人々の名前が刺繍されている。天井から吊るされたシースルーの布を通して布の反対側の世界とその間にしっかりと存在する歴史を生きた人々の名前。布の向こうに我々が見ているのは過去なのか未来なのか?